冷蔵庫の扉を開けると真っ暗だった世界に光が漏れる。
お腹が空いて仕方ないからすぐに食べられそうな物を幾つか手にしていたら、その内それは両手に抱える程になってしまった。
それからそれらを落とさないように慎重な足取りで来た道を引き返す。
自分の部屋の扉を開けると、真っ暗な世界の中でつけたままにしてあるテレビの四角い光だけがぼんやりと浮かんでいた。
それの傍まで来て、抱えていた物をすべて床へ落とす。
それから自分も腰を下ろし、散らばった物を適当に一つ摘み上げてビニールを引き千切る。
中身を口の中へ放る。
幾度か咀嚼して飲み下すと、もう一度同じ事を繰り返す。
食べる。
だんだんと空になったビニールの袋が周りを取り囲んでいく。
中身の無いそれらはいつの間にかゴミと言う名前に変わっていく。
胃の中へ物が溜まっていく。
空腹感は消え失せ膨れ上がった腹が苦しさを引き起こす。
それなのに、満たされない。
「ああまだ足りない」
このままだと冷蔵庫の中身を空にすることもた易いだろう。
空っぽの冷蔵庫を見たらユーリは何と言うだろうか。
「…だって、キミが居ないからいけないんだよ」
空っぽの城の中で、スマイルはひたすら満たすことだけを考える。
彼が居なければ城の中の物は何の意味も持たないし、すべての事も意味を失う。
こうして食べる事もまた意味を成さない。
彼でなければ、満たされない。
『過食症』
07/04/11