それはもしかしたら同じ者だったのかもしれないし、そうではなかったのかもしれない。
ただ吸血鬼の古い記憶の中に居る者と同じ顔をして笑っている。
佇む木陰の先の遠い土の上で強すぎる日差しを浴び、たくさんの見知らぬ者達に囲まれて笑っているのだ。
それはとても眩しくて、だんだんぼやけて滲みだす。
瞬間、視界が遮られて暗転する。目隠しをされたのだとすぐに分かった。
「…今日は暑くていけないね、キミの体温は低いからすぐに溶け出してしまう」
聞き慣れた透明人間の声はいつもより優しいような気がしたし、触れた手の平は酷く温かいように思えた。
吸血鬼の濡れた白い頬を、柔らかな風が撫でて通り過ぎる。
生まれ変わりなんてあるのかは知らないけれど、あの者の幸せを願わずにはいられなかった。





『優しい目隠し』

07/01/23